事業計画書のひな形(例)と事業計画書の作成方法

事業計画書のひな形(例)と事業計画書の作成方法

事業計画書の具体的項目

ここでは、一般的な事業計画書の様式を紹介します。
事業計画書の作成目的によっては、ここまで「本格的な事業計画書」は必要でないかも知れませんが、例え簡易的な表現をとるにしても本来これらの項目を考慮し、網羅することが必要であることを理解しておくことは意義があります。

また、(10)数値計画については、事業計画の目的によって詳細な計画値が必要な項目が異なることを理解しておきましょう。
例えが、社内計画であれば、各部門ごとの詳細な計画数字まで落とし込まないと計画の実現は無理かも知れません。
借入申込用の事業計画であれば、借入資金の使途とその返済計画が詳細に記述されている必要があるでしょう。


※なお、より簡易的な事業計画書を考えるたいときは、こくきんの「創業計画書」を活用すると良いでしょう。
    → → → → →   こくきん様式の「創業計画書」を使った、事業計画書の書き方についてはこちらをご覧ください

(1) エグゼティブ・サマリー

(2) 企業概要

(3) 経営陣

(4) 経営理念と事業目標

(5) 製品・サービスの内容とビジネスモデル

(6) ターゲット市場と市場規模、成長性

(7) 社内組織体制・人員計画

(8) 提携、外部協力者、支援者、関係者等

(9) 事業スケジュール

(10)数値計画

(11)要因分析とリスク対策

次に、これらの事業計画書の各項目に関しての記述のポイントを示します;

(1) エグゼティブ・サマリー

エグゼクティブサマリーとは、事業計画書の要約として、ビジネスプランの要点をまとめたページです。事業計画書の各項目の中でも、もっとも重要な部分です。 1ページで、「本事業がいかにすごいか?」を簡潔明瞭に表現することが重要です。さらに、エグゼクティブサマリーは、事業計画全体を表現していることが重要です。すなわち、エグゼクティブサマリーに続く項目((2)企業概要(3)経営陣(4)経営理念と事業目標(5)製品・サービスの内容とビジネスモデル(6)ターゲット市場と市場規模、成長性(7)社内組織体制・人員計画(8)提携、外部協力者、支援者、関係者等(9)事業スケジュール(10)数値計画(11)要因分析とリスク対策)の重要なポイントを網羅していることです。
事業計画の作成のアプローチの仕方として、「全体を書いてから、最後にエグゼティブ・サマリーでまとめる。のではありません。まず、計画の魅力的骨格をエグゼクティブサマリーで示し、さらに、エグゼクティブサマリーに続く項目で細部計画で肉付けし示して行くアプローチが重要です。

(2) 企業概要

簡潔に示します。会社設立前であれば、どのような会社をいつ設立する予定なのかを記述します。

代表者名、所在地、ホームページ、設立(予定)年月日、資本金、主要株主、従業員数、事業内容、事業開始の経緯 等

(3) 経営陣

起業に関して、「経営者の資質」は非常に重要な点です。

経営者の略歴、業務経験とスキル、人的ネットワーク等を記載します。また、経営者が複数人いる場合は、事業における役割分担についても記述します。

(4) 経営理念と事業目標

経営理念、事業の将来像(ビジョン)、経営上の哲学、質的な目標、数的な目標 等。目標に対しては、数ステップに分け、どのように実現して行くかを現実感を持った計画で示します。

(5) 製品・サービスの内容とビジネスモデル

ビジネスモデルとは、「どんな製品およびサービス」を「誰に」「どんな方法で提供するか」を示したものです。さらにそのビジネスモデルが成立する為には、「お客様に魅力的な価値をもたらし」、「収益を得る」仕組みを確立しなければなりません。
製品・サービスの内容とビジネスモデルは、事業計画書の中核をなすところであります。
まず本項目をまとめ、(5)(≒ビジネスモデル)→(1)(≒ビジネスプラン)→全体 の順でまとめるのが、思考の順と一致した、事業計画書の作成手順です。

事業計画書での、ビジネスモデルの説明の仕方として、従来のビジネスモデルと比較し、価格、性能、品質、納期、安全性、環境性、社会性等・・・ビジネスモデルの何が、優れているのかを示すのも一般的な方法です。

(6) ターゲット市場と市場規模、成長性

ターゲットとする市場を調査分析し、自社の特徴(強み、弱み)と合わせ、その成長戦略(優先順位)を示します。市場の調査については、統計的なデータに基づくマクロ的な分析と、市場関係者等のヒアリングによるミクロ的な分析の両面からのアプローチが有効です。

ターゲット市場図(例)

市場を大中小で3分類し、自社の強み強中弱の3分類を組み合わせることで、9つのセグメントに分類。

これらの市場の中で、どの市場を優先的に開拓して行くか。成長戦略を考えます。

ターゲット市場図

(7) 社内組織体制・人員計画

事業計画を実行するための社内組織(開発、生産、調達、マーケティング、営業等)をどうするか?内製するもの外製するもの。事業計画の推進スケジュールを実現する適正な人員計画や事業所設置計画を立てる必要があります。

(8) 提携、外部協力者、支援者、関係者等

起業準備、開発、生産、調達、販売、流通、アフターサービス等々・・E社内組織体制と合わせて、ビジネスモデルを成り立たせる為に必要な要素を網羅しているように書く必要があります。

(9) 事業スケジュール

事業計画を時系列に一覧表形式で記述します。長期的計画は大枠を中期的(3年程度)には詳細なスケジュールを記載します。

(10)数値計画

売上計画、投資計画、損益計画、資金計画を3年間〜5年間程度記述します。また、人数計画も合わせて記述しておけば、人あたりの数的指標を確認するのが容易になります。

売上計画はセグメント(商品群別、サービス別、市場別等)ごとに分け計画します。
売上計画と同時に粗利計画を作成します。
売上計画作成時には、「売上=客単価×客数」 または、「売上=商品単価×売上数」の基本公式から、
客数や商品単価を意識した計画にすることが重要です。

※売上計画の作り方
売上数字の算出の仕方には、業界により様々な方法がありますが、一般的には「物理的な売上数値」と「営業的な売上数値」の両面から考えることが大切です。
「物理的な売上数値」とは、店舗の面積や席の数、設備の生産能力、人員あたりの生産量、回転率、納期等、供給側からの制約条件から売上数字を算出する方法です。業界平均数値等統計数字を参考とすることも役に立ちます。
一方「営業的な売上数値」とは、自社の営業力で受注が得られる金額から売上数字を算出する方法です。具体的な客先名や顧客層を分類した上で具体的な数字計画が作成できることが大切です。また、営業的な売上数値は広告宣伝費や販売促進費や営業人件費等との経費との兼ね合いも考えることが必要です。
「物理的な売上数値」と「営業的売上数値」の小さい方を売上計画とするのが妥当でしょう。

投資計画は、(9)事業スケジュールに整合して作成します。投資経費は減価償却費として、損益計画に反映させます。
また、投資資金は、資金計画に反映させます。

損益計画は、売上粗利-経費 で計算します。
経費は、人件費、販売費、一般管理費、営業外経費(金利)に分けて計画するのが良いでしょう。
人件費は、人員計画に基づき計算します。
販売費は宣伝活動や営業活動等、事業計画推進の戦略に直結した数字になります。
一般管理費は固定費的要素が大きくなりますので、どの程度の器(組織、建物、設備等)を用意し、どのように運転していくかによって数字を計画して行きます。
営業外経費(金利)は、資金計画と整合して作成します。

税引後利益(損失)まで計画に記述します。
株主資本等変動計算も見込み、期末株主資本額も計上します。

資金計画は、資金繰表の形で作成するのが一般的です。
損益計算書をベースに支払い条件に合わせて、資金の増減をシミュレーションします。

(11)要因分析とリスク対策

ここまで述べて来た事業計画が成功する要因と失敗するリスクを分析します。
できるだけ具体的に、「いつの時点で○○が○○していること。」のように判断基準を明確にします。

内的要因(製品・サービス、技術、価格、組織等)と外的要因(市場、競合先、法律・制度等)に分けて、分析します。

さらに、要因はどのような基準で把握し、誰が、どのような対策を行うのかをできる限り具体化します。
あらかじめ、リスク発生時に切り替えるための複数のシナリオを準備しておき、○○の場合には、計画××に切り替えるような事業計画の運用方法もあります。

事業計画では、いかにリスクを取って行くかを計画的に明らかにしていくことも大切です。
一般に「ローリスク、ハイリターン」をうたうビジネスモデルほど、詐欺紛いのビジネスの場合は言うに及ばずですが、実はリスク分析がされておらず「ハイリスク」である場合が多いものです。「リスクはないので心配はいらない」とするのではなく、リスクはあるものの前提に立ち、いかにその「リスクをヘッジして行くのか」を計画すべきです。