起業、会社設立、事業計画書、契約書、社内規程、インターネット、法務、中小企業支援。愛知県、名古屋市、豊田市 井藤行政書士事務所

  倒産しそうな企業の見分け方(経営財務内容の問題編)

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会社設立、独立、起業、開業と新会社経営
第17号(2009/03/03
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こんにちは。行政書士の井藤です。
いつもメールマガジンを購読頂きましてありがとうございます。
新年より、メールマガジンのタイトルを変更させて頂きました。
旧タイトルは「起業、開業、会社設立準備とビジネスモデル」でしたが、新しく「会社設立、独立、起業、開業と新会社経営」になりました。
ビジネスモデルを中心に起業や起業後の会社経営のいろいろについて取り上げて行くことには変わりませんが、
より、有意義なコンテンツの配信に努めたいと思いますので、引き続き、よろしくお願い申し上げます。

今回は、前回に引き続き、日本商工会議所発行の冊子「倒産の防止のために」に、記載の「倒産しそうな企業の見分け方」を利用して、
倒産しない企業にするためにはどうしたら良いかを考えてみたいと思います。?

◇第17号のメニューはこちらです
(1)倒産しそうな企業の見分け方(経営財務内容の問題編)
(2)編集後記

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(1)倒産しそうな企業の見分け方(経営財務内容の問題編)

■「倒産しそうな企業の見分け方」を反面教師として利用する

「いかにしたら事業が成功するのか?」を考えることは難しいことです。
事業の成功談は、成功した事業の数だけありますが、それぞれ、個別の状況下における結果であり、
それを、後から真似しても簡単に成功できるものではないからです。

しかし、事業の失敗には、いくつかの共通点があるようです。
そこで、逆に、「どうしたら事業は失敗するのか」を知り、その失敗を避けることを考えることは、有効なことだと思います。

日本商工会議所発行の冊子「倒産の防止のために」にでは、「倒産しそうな企業の見分け方」と題して、
社長、経営者面と財務面から見た「危ない企業の兆候」が、列記されています。

今回は、前回の社長、経営者面に引き続き、財務面について、各項目を考察してみたいと思います。

■日本商工会議所発行の冊子「倒産の防止のために」の項目
冊子「倒産の防止のために」記載の「倒産しそうな企業の見分け方(経営財務内容の問題)」では、以下のような項目が載っています。

01) 金融機関からの借入が多すぎる (「月商」対「借入金」が6ヶ月を越えてきている)。
02) 支払利息が年商の3%を越えてきている。
03) 最近、設備投資を行ったが過大と思われる。
04) 多角経営を始めたが無理がみられる。
05) 業界の競争が激化し利益率が低下した。
06) 以前倒産しかけたことがある。
07) 最近急に取引銀行を変えた。
08) 新製品を出したが売れ行きに不安がある。
09) 大手が進出し先行に不安がある。
10) 規模の割に営業所が多い。
11) 経営、販売方針等に特徴がなく一貫性に欠ける。

■01)「金融機関からの借入が多すぎる(「月商」対「借入金」が6ヶ月を越えてきている)」を考える

中小企業の社長には、銀行からの借り入れが上手な社長と、銀行からの借り入れが下手な社長がいます。
倒産しそうな企業の社長が、銀行からの借り入れが下手な社長かと言えば、必ずしもそうではありません。
何故なら、銀行からの借り入れが下手な社長は、そもそも、あまり多額な借り入れをしていない(できない)からです。
逆に、銀行からの借り入れが上手な社長によっては、ついつい余分に借りてしまう恐れがあります。

「「月商」対「借入金」が6ヶ月」。
すなわち、「借り入れは年商の半分以下」を経営のひとつの目安にすべきです。
(但し、この数字は一般的な目安であり、設備投資等特別な要因があり合理的な説明がつくような場合は例外です)

ここで気をつけなければならないのは、売り上げが急激に減少した時です。一気に、数字は悪化します。
起業の際、借入額を決める際も、理想的な売上計画だけを元にせず、最悪の場合も想定した資金計画を立てることが大切です。

■02)「支払利息が年商の3%を越えてきている」を考える

01)の「「月商」対「借入金」が6ヶ月以内」に続き、もうひとつの指標「支払利息が年商の3%以内」と言う目安の数字です。

支払利息の分だけ、企業の利益は減ってしまいます。従って、支払利息が増えると利益が出なくなってしまいます。
利益が出ない会社は、元金の返済ができません。よって、倒産しそうな会社になってしまいます。

業況が良いときには、事業の拡大の為に借入金が必要となることもあるでしょう。
一方で、業況が悪いので、借入金が必要にもなるでしょう。
と言うように、いつでも、借入金を必要にしていると、いつのまにか、返済や利払いで、苦しい会社になってしまいます。

十分注意しましょう。

■03)「最近、設備投資を行ったが過大と思われる」を考える

「最近、設備投資を行ったが過大と思われる」と世間に言われた社長にとっては、反論の余地が大いにあると思われます。
社長なりに、事業に対する思い入れ、先見性を持って、計画的に投資したのではないかと思われます。

リスクを取ることとギャンブルをすることは紙一重かも知れません。
度胸がある社長は魅了的ですが、無謀な社長は会社を潰します。
結果を見て、後で「馬鹿な社長」と言うこと、「先見の名があった」と言うことは簡単ですが、当事者は大変です。

慎重に&大胆に。
社長たるもの、「投資のプロ」になることは難しいですが、自分の専門分野に限った事業に直接関する投資については、
判断能力を身に着けていたいものです。

■04)「多角経営を始めたが無理がみられる」を考える

「多角経営を始めたが無理がみられる」と世間に思われた社長にとっては、多くは、反論の余地があるのではないかと思われます。
新事業に対する思い入れ・先見性を持って、計画的に多角経営を始めたつもりの社長が多いのではないかと思われます。

多くの社長が、本業でのいくつかの成功体験を持っていることでしょう。
成功体験(や失敗体験)を糧に、新規事業の苦難の道を乗り切ることができる社長がいます。
一方、過去の成功体験に溺れ、「こんなはずではなかった」で終わってしまう社長がいます。

このようにヒットを重ねることができる社長と一発屋の社長の差は何でしょうか?
ヒットを重ねる社長は、ヒットの理由を自ら分析し理解している。
一方、一発屋の社長は、運よく一度は、ヒットを打つことができのですが、その成功理由が分からない為、二発目もひたすら運に任せている。
そんな違いではないでしょうか?

多角経営を始めるにあたって自社の優位性がどこにあるのか、しっかり把握しているかどうかの違いとも言えると思います。

■05)「業界の競争が激化し利益率が低下した」を考える

「有望な市場であればこそ、新規参入者も多く、徐々に競争が激化し利益率が低下する」傾向にあります。

先駆者の利を活かして、自社を変革し、新しいビジネスモデルを描くことができる会社があります。
一方で、従来の古いビジネスモデルにしがみつき、価格競争の渦に飲み込まれてしまう会社があります。
成長する企業と倒産する企業の分岐点となります。

■06)「以前倒産しかけたことがある」を考える

「以前倒産しかけたことがある」あるいは「以前倒産したことがある」場合、何らかの原因があったはずです。

その原因がしっかり、分析、反省され、現在の経営に活かされているでしょうか?

よもや、「以前倒産しかけたことがある」あるいは「以前倒産したことがある」ときの原因を他人のせいや
あるいは運が悪かったですましてはいないでしょうか?

人は、特別に意識しなければ、無意識のうちに、同じパターンの行動をしがちです。
一度失った信頼を回復するには、普通の人以上に、意識改革が必要でしょう。
そのような姿が見えない社長だとしたら、やはり、不安に思われることでしょう。

■07)「最近急に取引銀行を変えた」を考える

まず、経営者の方が気をつけなければならないこと。
「急に取引銀行を変える」と、世間では「倒産しそうな会社」と思われる恐れがあることです。
変な誤解を招くことがないように注意しましょう。

では、なぜ、「急に取引銀行を変える」と「危ない会社」と思われてしまうことがあるのでしょうか?
日本の場合、取引銀行と言えば、多くは、借入先の銀行のことを連想します。

中小企業の多くの設備資金や運転資金は、銀行からの資金調達に頼っているのが現状です。
従って、多くの中小企業を間接的に(資金面で)支配しているのが銀行の役目です。
このような「銀行が急に変わる」と言うことは、大事件と捉えられるのです。

「銀行が急に変わった」→「原因は何だろうか?」が、の疑問です。
納得できる理由があるのであれば、良いのですが、それでも、「急」は問題です。
計画的に運営ができない会社と思われます。

また、銀行とのトラブルを自慢げに語る社長もいらっしゃいますが、一般的には余り評価されるものではありません。
仮にそのトラブルについては銀行に非があるとしても、そのようなトラブルを招いてしまった原因には
社長自身の経営能力の問題が関係していると通常は思われるからです。

■08)「新製品を出したが売れ行きに不安がある」を考える
「新製品を出したが売れ行きに不安がある」は、新製品投入に関する投資の金額が、売り上げに対して過大となる不安のことです。
鳴り物入りで、多額の投資金額を投入した場合ほどリスクも大きくなります。

当初は、慎重に投資していたが、売り上げが好調であった為、
一挙に増産を掛けたことが多大の損失を招く結果となってしまった場合もあります。

また、上述のような急性の大事件ではなく、「従来通り、事業を行っているのだが、売上げはジリ貧状態。新製品を出してもぱっとしない。」ような
慢性型の不安な会社もあります。このような会社は過去の成功体験から脱皮することができなかった会社と言えるかも知れません。

■09)「大手が進出し先行に不安がある」を考える

「中小企業が先行したことを大手が真似をして資本の力で 一気に市場を奪われた。」
残念ながら、こうなってしまった会社は、倒産しそうな会社に入るでしょう。

見た目だけ真似しても上手くはいかない。
そんな、隠れたところに本当の強みがあるものだと思います。
このような本当の強みを持っていない会社は、一時は良くても、将来に不安のある会社に分類されています。

意外に、自社の強みを自身が理解していない会社もあると思います。
自社の強みを冷静に分析し、その強みを、何重にも活かす方法を考え、安易には他社には真似されないような状況を作り出すことが大切です。

■10)「規模の割に営業所が多い」を考える。

営業所の数に限らず、企業が成長して行く為には先行投資が必要でしょう。
先行投資を完全に抑えてばかりいたら、成長する会社はなくなってしまうかもしれません。

その中で、「営業所の数」等は、外部から見ても、その会社の戦略が、大変分かりやすい指標かも知れません。
本社集中型なのか地区分散型なのかあるいは代理店型なのか等、事業により特色があるので、
一概に「営業所の数」だけで、どうのこうの判断できるものではありません。

しかし、業況が芳しくないと、「どうも営業所が機能していないのではないか?」とのマイナス面が見えて来るものです。
他社との市場争い(陣取り合戦)の為に、無理して、営業所を開設しても、思うように業績が伸びない場合、
倒産リスクは大きいと言えるかも知れません。

■11)「経営、販売方針等に特徴がなく一貫性に欠ける」を考える

このタイトルには2つの要素を含んでいると思います。

すなわち、
1)経営、販売方針等に特徴がないこと        または、
2)経営、販売方針等一貫性がないこと       です。

1)経営、販売方針等に特徴がないこと
自社の強み(あるいは強みとすべきこと)を自覚しておらず、自社が自立する方向性を見出していない会社と言 うことができます。
かっては、業界横並びで、あるいは、親会社に従うのみでも、事業が成り立ったことがあったかもしれません。
しかし、今後は、多くの企業に、自ら考え、自立することが求められています。

2)経営、販売方針等一貫性がないこと
社長の方針がコロコロ変わる社長は信用されません。
一方で、状況によってコロコロ変わるのは当たり前で、むしろ臨機応変に変わるのが良い社長だと言うこともあります。
どちらが正解でしょうか?

方針変更の理由が筋が通ったものであれば問題ないでしょう。
問題なのは、訳が分からない状態で、方針がコロコロ変わることです。

さらに問題なのは、方針が変わっていることに対する社長の自覚がない場合です。
「話が違う」と周りが思うような場合は最悪です。 「嘘を付く人」と言うレッテルが貼られます。
このようなレッテルを貼られた社長は、周りからの信頼が全くありませんので、その会社の将来は大変不安です。

(2)編集後記

前回に引き続き、「倒産しそうな企業の見分け方」を利用して、倒産しない方法を考えるきっかけとすること試みました。 

自身の思いを実現するために一心不乱に事業に打ち込むことは素晴らしいことですが、
ときには、立ち止まり、先人の失敗例に学ぶとともに、世間ではどう見ているのかを知ることも、大切ではないかと思います。

最後になりましたが、皆様の、ビジネス、健康、生活が豊かなものとなりますことを祈っております。

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発行元  行政書士井藤事務所  井藤真生
事務所e-mail    gyosei@fullstage.jp
事務所HP  http://www.itoh.fullstage.biz/
〒471-0063  愛知県豊田市京町3−111−1
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