愛知県豊田市の井藤行政書士事務所 | 起業支援、会社設立、事業計画、文書、契約書、経営改善・経営革新、事業承継、経営承継。愛知

        会社を辞めて起業するときに気をつけるべき法律

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会社設立、独立、起業、開業と新会社経営
第34号
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今回は、『起業を予定している人が会社を辞めるときの注意事項』をお送りします。

◇第34号のメニューはこちらです
(1)『会社を辞めて起業するときに気をつけるべき法律』
(2)編集後記

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(1)『会社を辞めて起業するときに気をつけるべき法律』

■ 退職前に注意すべきこと

1)退職するまでは就業規則、社内規定を厳守しよう

 退職届が受理された後でも、正式な退職日までが、会社との労働契約期間中であり、
従業員は就業規則をはじめとした会社の規則に従い、上司  の指示・命令に従う義務があります。
特に、退職後、独立・起業し、会社と競合するかも知れないような場合には注意しましょう。
退職時には会社から何も言われなくとも、後で、起業後、「勤続期間中の就業規則違反」で訴えられるリスクがあります。

また、勤務期間中や勤務時間中に、表だった起業の準備などの行為は厳禁です。
退職前の取引先への挨拶などでも起業のことはあまり言及しないように注意しましょう。
後で、会社が取引先を回って、退職者の行動を聴きとり調査しているようなケースはよくあることです。

2)モノや情報の持ち出しの疑いをかけられないように注意しよう

退職後でよくあるのは、「○○は引継ぎを行わず勝手に辞めて言った無責任なやつ」発言。
さらに悪いのが、「△△がない」・・「そう言えば  以前○○が使っていたので、彼が持ち出したのに間違いない。
警察に告訴しよう」などまで発展しているケースもあります。

会社を辞めるときは、引き継ぎを確実に行い、自らは重要なモノや情報は全て返却したことと併せて、
文書で確認をしておきましょう。
引継完了書や物品返却書は、辞める会社の為ではなく、「自分の身を守る為に必要だ」と考えておいた方が良いでしょう。
特に、顧客データや商品データ、個人データなど、会社の機密情報や個人情報に関連しそうな情報はしっかり返却を行ない、自ら、「返却届け」を作成し、返却したものを一覧にして、「引継完了書」確認の署名または押印をもらうようにしておけば完璧でしょう。

■ 会社を辞めて起業するときに気をつけるべき法律

 上述したように、就業期間中は「労働契約の遵守、誠実義務」がありますので、
就業規則や会社の規定、命令・指示などには従わなければなりません。
また、同時に会社との「競合避止義務」も課せられています。
退職後は、労働契約は終了していますので、退職前のような義務は原則なくなります。
しかしながら、会社を辞めて「起業する」場合や、会社と競合する会社に就職するような場合には、
特に気をつけなればならないことがあります。
「競合避止義務」と「営業秘密不正取得・利用行為等」です。

1)「競合避止義務違反」は限定的だが対象の場合は注意が必要
労働契約中に従業員が「競合避止義務」を負うのは当然のことですが、退職後は、憲法で保障される「職業選択の自由」に従い、
どんな仕事に就こうが原則自由です。
しかしながら、特に、会社が、限られた従業員に対して、例えば、
「○○は極めてノウハウが高い仕事であり、その流出防止を図る為、3年間に限り、競合先(具体的な社名付き)への就職を禁止する。その為の見返りとして、退職金を○○円を加算する」のような契約をしているような場合は、退職後の従業員にも「競合避止義務」が課される場合があります。
このように、限定的に、会社に合理的理由があり、と判断される場合にのみ、退職後も「競合避止義務」が課せられるものであり、
原則は自由と考えて良いでしょう。

2)「営業秘密不正取得・利用行為等」には注意しよう
「不正競争防止法」では、他人の商号や商標、商品の形状などを真似る行為。いわゆる偽ブランド等の禁止と、品質内容等誤認惹起行為。いわゆる産地偽装や原材料不正表示等と、ともに、「営業秘密不正取得・利用行為等」を禁止しています。

「不正競争防止法」において「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上 の情報であって、公然と知られていないものをいう。と定義されています。
すなわち「不正競争防止法」の「営業秘密」は  1)秘密管理性:「秘密として管理されている」こと  2)有用性:「有用な」情報であること  3)非公知性:「公然と知られていない」こと  ・・・・ の3つの要件を満たしている必要があります。

このような「営業秘密」に対して、「不正競争防止法」では、
 ・「営業秘密」を不正に取得し、これを使用する行為、
 ・不正に取得された「営業秘密」を不正に開示する行為 を禁止しています。
また、営業秘密の開示や利用による実損害が発生していなくとも、不正に営業秘密情報を取得した行為のみので対象となります。

「営業秘密」の「不正取得」などと言うと産業スパイが代表的ですが、元従業員の場合、従業員のときは、自らの業務のため、当然持っていた情報であったとしても、(その情報を第三者に「開示」したり、利用したりした場合は当然ですが)退職後も引き続き所持しているとそのことのみでも「営業秘密」の「不正取得」とされるリスクがあることに注意しなければなりません。

また、「不正競争防止法」違反の場合は、民事上の損害賠償が課されるだけではなく、刑事罰も課せられることも注意が必要です。
従って会社側は、(費用のかかる)民事上の裁判を起こさなくとも、まず、刑事告訴を行い、警察や検察に捜査をしてもらい、その証拠を元に民事裁判を起こすことが可能です。
このことは、裁判の前に警察の家宅捜査や逮捕されるリスクもあることを意味しています。

(2)編集後記
 今回は、『会社を辞めて起業するときに気をつけるべき法律』と題して、
「不正競争防止法」の「営業秘密」を中心に取り上げました。
「不正競争防止法」の「営業秘密」違反は、
会社を辞めて起業する人にとっては誰でも犯してしまうリスクがある「犯罪」ですので注意が必要です。
起業後、法律違反とならないように意図的に注意することはもちろん大切ですが、いらぬ疑いをかけられないようにする為には、
退職前 に、重要情報の返却を確実に行っておくことが大切です。 (いくらこちらに非がなくとも、警察の捜査に対応しなければならなくなったりしたら、新しい事業に支障を来たすリスクがあります)

最後になりましたが、皆様の、ビジネス、健康、生活が豊かなものとなりますことを祈っております。

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発行元  行政書士井藤事務所  井藤真生
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