下請法とは。対象とポイント

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下請法(下請代金支払遅延防止法)とは


→→→ 下請代金支払遅延防止法の条文はこちらで確認することができます(公正取引委員会サイト)

→→→ 下請法対応取引標準基本契約書ひな形はこちらで確認することができます(中小機構サイト)

下請法とは

下請代金支払遅延等防止法(下請法)第1条(目的)
この法律は,下請代金の支払遅延等を防止することによつて,親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに,下請事業者の利益を保護し,もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。

独占禁止法では、取引上、優越的地位にある業者が、取引先に対して不当に不利益を与える
行為を優越的地位の濫用として、禁止しています。
独占禁止法の補完法である下請代金支払遅延等防止法(下請法)では、下請取引における
親事業者の禁止事項や義務事項を定めています。

下請法の大きな特徴は、発注者である親事業者のみに適用される法律であること。
例え、下請事業者が承諾した契約や下請事業者が希望した契約であっても下請法に違反して
いる契約部分は無効とされ、 親事業者に是正の義務が生じることにあります。

以下に下請法の概要を述べます

下請法理解の為の4つの数字「2と4、11と4」

下請法を理解するために、「2と4、11と4」の4つの数字を押さえておくと便利です。
下請法では以下の4つの項目が定められています。
1)(つの)対象となる下請取引の範囲(発注者と受注者の資本的区分)
2)(つの)対象となる下請取引の範囲(取引の内容)
3)(11個の)親事業者の禁止事項
4)(つの)親事業者の義務事項

対象となる下請取引の範囲     1)資本金区分 (つの資本的区分)

下請法の適用を受けるか否かについては、つの資本金区分があります。
これらのつの資本金区分に該当し、かつ、2)のつの取引類型のいずれかに該当する場合、
下請法の適用を受けます。

a 物品の製造委託・修理委託、プログラムに係わる情報成果物作成委託
又は運送、物品の倉庫保管及び情報処理に係わる役務提供委託の場合

(1)親事業者の資本金が3億円超で、
下請事業者の資本金が3億円以下または個人事業者
(2)親事業者の資本金が1千万円超3億円以下で、
下請事業者の資本金が1千万円以下または個人事業者

※資本金が1千万円超~3億円以下の会社は親事業者になる場合と、
下請事業者になる場合の両方が想定されます。
※発注元の親会社が子会社を使って下請法の適用を逃れようとする行為は、
トンネル規制と言い、下請法の適用を受ける場合があります。

b 情報委託物作成委託(プログラムに係わるものを除く)
又は役務提供委託(運送、物品の倉庫保管及び情報処理に係わるものを除く)

(1)親事業者の資本金が5千万円超で、
下請事業者の資本金が5千万円以下または個人事業者
(2)親事業者の資本金が1千万円超5千万円以下で、
下請事業者の資本金が1千万円以下または個人事業者

対象となる下請取引の範囲     2)下請法の適用を受ける取引 (つの適用取引)

下請法の適用を受けるか否かについては、つの取引区分があります。
1)のつの資本金区分に該当し、かつ、これらのつの取引のいずれかに該当する場合、
下請法の適用を受けます。

1)製造委託
2)修理委託
3)情報成果物作成委託
4)役務提供委託

※上記下請法の適用を受ける4つの取引内容の詳細は、各リンクページを参照して下さい
なお、建設業に関しては下請法の適用はありませんが、建設業法の適用がありますので、
注意が必要です。

3)親事業者の遵守事項 (11の禁止事項)<第4条>

親事業者の禁止事項が11項目課せられています。
これらの規定は、強行規定であることから、たとえ、下請業者の了解を得ていたとしても
また、親事業者に違反性の意識がなくても、これらの規定に触れるときは、
下請法に違反することになるので、親会社は、十分注意する必要があります。

(1)買いたたきの禁止 <第4条第1項第5号>

市価や類似価格等に比べ著しく低い下請代金を不当に定めること

(2)受領拒否の禁止 <第4条第1項第1号>

下請事業者に責任がないのに、注文した物品等の受領を拒むこと
(たとえ親事業者に責任がなくともを含むことに注意)

(3)返品の禁止 <第4条第1項第4号>

下請事業者に責任がないのに、注文した物品の返品をすること
(たとえ親事業者に責任がなくともを含むことに注意)

(4)不当な給付内容の変更・やり直しの禁止 <第4条第2項第4号>

下請事業者に責任がないのに、親事業者が費用を負担せず注文内容を変更したり、
やり直しをさせること
(たとえ親事業者に責任がなくともを含むことに注意)

(5)下請代金の減額の禁止 <第4条第1項第3号>

下請業者に責任がないのに、あらかじめ定めた代金を減額すること
(たとえ親事業者に責任がなくともを含むことに注意)

(6)下請代金の支払い遅延の禁止 <第4条第1項第2号>

支払代金を給付の受領後60日以内に定めた支払い期日までに支払わないこと
(請求書の未着は理由にならないことに注意)

(7)割引困難な手形の交付の禁止 <第4条第2項第2号>

一般の金融機関では割引が困難な手形を交付すること
(サイト120日(繊維業なら90日)を越える手形を禁止しています)

(8)有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止 <第4条第2項第1号>

有償支給原材料の対価を、当該原材料を用いた給付に係わる下請代金の決済日より
先に支払わせたり、 相殺したりすること
(たとえ親事業者に責任がなくともを含むことに注意)

(9)購入・利用強制の禁止 <第4条第2項第6号>

親事業者が指定する物や役務を強制的に購入・利用させること

(10)不当な経済上の利益の提供要請の禁止 <第4条第2項第3号>

下請業者から不当に金銭、役務の提供等をさせること

(11) 報復措置の禁止 <第4条第1項第7号>

下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを
理由として、 不利益な取扱いをすること


4)親事業者の義務事項

親事業者の義務事項が項目課せられております

(1) 書面の交付義務(発注書等の発行義務) <第3条書面>

親事業者は、下請事業者に製造委託等をした場合は、直ちに、
法令で定める内容を含んだ書類を発行しなければなりません

この規定のねらいは、下請取引において口頭による発注は発注内容や支払条件等が不明確で
トラブルが生じやすく、トラブルが生じた場合には、下請事業者が不利益を受けることが多いので、
親事業者から発注内容を明確に記載した書面(「3条書面」または「発注書面」という。)を発注の
都度下請事業者に交付させ、下請取引に係るトラブルを未然に防止するとともに、親事業者が
自主的に下請法を遵守することを期待し、下請取引の公正化を図ることです。

なお、違反行為には、50万円以下の罰金が課されます。

発注書等に含めなければならない内容

(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう、明確に記載する。)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日
(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
(5) 下請事業者の給付を受領する場所
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,その検査を完了する期日
(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが、算定方法による記載も可)
(8) 下請代金の支払期日
(9) 手形を交付する場合は、その手形の金額(支払比率でも可)と手形の満期
(10) 一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払可能額、
親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
(11) 原材料等を有償支給する場合は、
その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日、決済方法

※ 取引条件について支払方法等の基本的事項が一定している場合には、
これらの事項を記載した書面をあらかじめ交付しておけば、必ずしも個々の発注書面に
これらの事項全てを記載する必要はありません。ただし、この場合、個々の発注書面に
基本的事項を記載した書面との関連付けを記載する必要があります。
(発注書面に記載する関連付けの例:
支払方法、支払い条件等は、平成◯年◯月◯日付け「支払方法について」によります。 )

下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面に係る参考例(公正取引員会)

下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面(3条書面)には、
「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則(3条規則)」に
定める事項をすべて記載する必要があるが、その様式には特に制約はないので、
それぞれの親事業者において、発注、納品、経理等の個々の下請取引の内容に即したものを
作成することが可能である。また、
親事業者と下請事業者の間で取り交わされる契約書等の内容が、
3条規則で定める事項をすべて網羅している場合には、
当該契約書等を 3条書面とすることが可能であるので、別に書面を作成する必要はない。

※ 実務上は、取引基本契約書+個別の注文書等で、上記の3条書面の要件を満たすのが一般的です。


(2) 支払期日を定める義務 <第2条の2> 

親事業者は、下請事業者との合意の下に、親事業者が下請事業者の給付の内容について
検査するかどうかを問わず、下請代金の支払期日を物品等を受領した日(役務提供委託の
場合は、下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内でできる限り短い期間内
で定める義務があります。
(なお、運用として60日以内規定は2か月内規定としている。)

※例
「月末締、翌月末払い」の場合は、60日以内規定にいつでも納まりますが、例えば、
「月末締、翌々月10日末払い」の場合で、 5月1日に給付があったような例では、
支払日は、当月30日+翌月30日+10日=70日後となり、
60日以内規定違反となってしまいますので、注意が必要です。


(3) 書類の作成・保存義務 <第5条書類> 

親事業者は、下請事業者に対し
製造委託
修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした場合は
給付の内容、下請代金の額等について記載した書類を作成し、2年間保存する義務があります。

なお、違反行為には、50万円以下の罰金が課されます。

5条書類の記載必要事項は以下の通りです
(1) 下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託、修理委託、報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は役務の提供の内容)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をする期日・期間)
(5) 下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者から役務が提供された日・期間)
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は、検査を完了した日,検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
(7) 下請事業者の給付の内容について、変更又はやり直しをさせた場合は、内容及び理由
(8) 下請代金の額(算定方法による記載も可)
(9) 下請代金の支払期日
(10) 下請代金の額に変更があった場合は、増減額及び理由
(11) 支払った下請代金の額,支払った日及び支払手段
(12) 下請代金の支払につき手形を交付した場合は、手形の金額,手形を交付した日及び手形の満期
(13) 一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
(14) 電子記録債権で支払うこととした場合は、電子記録債権の額,下請事業者が下請代金の支払を受けることができることとした期間の始期及び電子記録債権の満期日
(15) 原材料等を有償支給した場合は、品名、数量、対価、引渡しの日、決済をした日及び決済方法
(16) 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価を控除した場合は、その後の下請代金の残額
(17) 遅延利息を支払った場合は,遅延利息の額及び遅延利息を支払った日

※5条書類の内容は、基本的には3条書面内容と一致するものであり、 実務上は、個々の取引における
上記内容・顛末がわかる書類(通常は契約書や仕様書、発注書、納品書、請求書、領収証など)を保管して
おくことが大切です。

(4) 遅延利息の支払義務 <第4条の2> 

親事業者は、下請代金をその支払期日までに支払わなかったときは、下請事業者に対し、
物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をした日)から起算
して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について,その日数に応じ当該未
払金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う義務があります。


下請法対応に関する留意事項

多くの大企業では下請法を遵守するための取り組みがなされていますが、
中小企業も、下請法に対する意識を高める必要があります。

具体的には、自らが下請事業者となる場合は、親事業者との取引契約に関して、
下請法を意識した交渉が可能となるでしょう。
同時に、資本金が1000万円を超える会社については、発注の際、自らが親事業者となる場合
がありますので、下請法遵守義務が生じて来ます。


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下請法に対する情報は以下もご確認下さい

下請法対象取引(1) 製造委託

下請法対象取引(2) 修理委託

下請法対象取引(3) 情報成果物作成委託

下請法対象取引(4) 役務提供委託

下請法違反罰則について

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